東京高等裁判所 昭和49年(ツ)105号 判決 1974年11月28日
控訴人
埼玉三菱コルト自動車販売株式会社
右代表者
中島信三
右訴訟代理人
和久井四郎
被控訴人
タツミ産業株式会社
右代表者
柳田辰己
右訴訟代理人
高木新二郎
外二名
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人和久井四郎の上告理由第一二点について。
原審が適法に確定した事実によると、上告人はさきに被上告人を相手方としてAB各契約につき被上告人が右各契約に定める昭和四五年一〇月末日限り支払うべき割賦金を支払わなかつたことが、特約に基く解除理由ロに該当するとして昭和四六年三月二日各契約をいずれも解除したうえ、本訴におけると同額の金一四万三、〇〇〇円についての損害賠償および解除の日の翌日から支払いずみに至るまで年六分の割合による遅延損害金請求の訴を川口簡易裁判所に提起したが(同裁判所昭和四六年(ハ)第一一号損害賠償請求事件。以下たんに前訴という)、昭和四七年二月八日上告人全面敗訴の判決が言渡され、該判決はその当時確定した。本訴は前訴におけると同様AB各契約の特約ロ②に基く解除理由―被上告人が……第三者(本件の場合大蔵省、厚生省)から仮差押、仮処分、強制執行、競売……申立等を受け……会社整理の申立をしたとき―に該当するとして昭和四七年一一月二一日AB各契約をいずれも解除し、被上告人に対し前訴におけると同額の金一四万三、〇〇〇円の損害賠償および解除の日の翌日から支払いずみに至るまで日歩九銭九厘の割合による遅延損害金の支払いを求めるものであるところ、右特約ロ②に該当する事実は、いずれも前訴の口頭弁論終結時以前に存した事実であるというのであり右事実は挙示の証拠に照らし明認できるところである。
ところで債務不履行により契約を解除して損害賠償等を請求する訴の訴訟物は、一定の契約とこれが解除の意思表示より特定され、解除原因のごときは請求を理由あらしめる攻撃方法としての性質を帯有するに過ぎないものと解するのが相当である。
したがつて解除原因を予備的または併列的に列挙主張しても、これによつて訴訟物たる請求が多数存在するということにはならないのであつて、前訴における最終口頭弁論期日以後に発生した新たな解除原因に基き解除の意思表示をなしたうえ損害賠償等の請求の訴を提起するならば格別、右時期以前に既に発生していた事実を把えて右時期以後に解除の意思表示をなし、これに基く損害賠償等請求の訴を提起したとしても前訴確定判決の既判力の効力をうける結果裁判所としても結論において前訴判決と異なる判断をなすことはできないことになる。
本件の場合、前記事実関係に徴すれば、前訴判決が上告人の請求を棄却しているのであるから、本訴請求についても上告人は請求棄却の判決を免れないところである。したがつてこれと同旨の原審の判断はもとより正当であり、上告人の主張は独自の見解であつて理由がない。《以下省略》
(浅沼武 加藤宏 園部逸夫)
(別紙)上告理由《省略》